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薪ストーブの中の雀


一週間ほど前、
子供たちが夏休みに入るほんの少し前、
朝目覚めて1階のキッチンに下りてくると
バサッ パタパタ ガタッ バサッ と
聞き慣れない音がどこかからする。

ギョッとした。
もしかしてネズミ?
どこから?と
音のする方に近づいてみる。
どうやら薪ストーブの辺りらしい。

中を覗き込むと
こちらを見ている小雀と目が合った。
煙突から入ったのだろう。
私を見た途端、慌ててバサバサ
ストーブの中を飛び回った。

とりあえず子供に見せよう、と思い
まだ寝ている彼らを起こしに行った間に
雀は消えていた。
煙突内を移動している様子。

どうにも出来ずに、
その朝は
そのまま会社に出かけた。

夜になって夕飯が終わった頃、
娘が「雀、いるよ」と言う。
ストーブ内を見ると
雀がじっとこっちを見ている。
意を決して扉を開ける。
少し後ずさったけど逃げない。
そっと捕まえて庭に運んだ。

弱ってしまったのか
寝ぼけているのか
土の上に置いても飛び立つ気配がない。

明日の朝にはいなくなっていてね、
と娘と祈りつつ、
その夜は雀にサヨナラした。

翌朝、昨夜置いたその同じ場所で
雀はコロンと横になって死んでいた。
一日中、出口を探して
ストーブと煙突を行ったり来たりで
疲れ切ってしまったのだろう。

ショック だった。

娘は「元気な雀を買って来よう」と言った。
自分がもっとちゃんと面倒見てれば
この雀は死ななかったはず。
こんどはちゃんとお世話する!と頑張る。

新しい命を「買う」という考えがイヤで
私は娘を「それは間違っている」と叱った。

でも私は正しかったか?
自分でも分からない。

元気のなくなった雀を見て
餌をやりたがった娘に、
どうせ食べないだろうから、と
私はそれを承知しなかった。

娘の気が済むように
お世話させてあげれば良かった?
ほんの少しの間でも
生き物に愛情を持つ体験をさせれば良かった?
と自分に問いかけても、今ではもう遅い。

命の重さをどう説明したらいいのか。

無くなってしまった小さな命を前に
すっかり私は考え込んでしまった。
by wine-mura | 2013-07-27 23:08 | その他
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