空港で


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帰国前日。最後の自転車をおじいちゃんと楽しんだ。


帰国日、ボルドーの空港でのこと。

税関審査官の女性は、不機嫌に服を着せたような人だった。
年の頃は50、
白髪まじりの髪を無造作に束ね、
眉間には深い皺、
化粧っけのない顔、
への字に閉じられた口元。

「パスポート!」
「搭乗券!」
 と、会話は全て単語。

おっかないオバさんだな、と密かに思っていると、
パスポートをじっくり見ていた彼女が言った。

「それで、ここんとこフクシマはどうなの?」

どうって、相変わらずノロい行政や政治家に腹を立てながら、でも皆懸命に生きてます、
と答えると、
震災後、毎日毎日繰り返し悲惨な光景をテレビで見たこと、
それが突然、イギリスのロイヤルウエディング以降消え去ったこと、
今では人々の会話にフクシマのフさえ出てこないこと、
などを、不機嫌なカオのまま機関銃のように話し、
まったくこの国の人間のアタマはどうかしてるんじゃないかと思う、
と怒り続けた。

突然の思いがけない展開に驚きつつも、
彼女の気持ちに思わず涙が出そうになった。

この人は世の中の不条理に怒り続けて、この顔になったんだ。

「でも貴方は考えてくれてるじゃありませんか」
 と、私は言った。
1万キロ以上離れたこの土地で、
私たちのために腹を立ててくれている人がいることを知って、
私はものすごく感激してる、
と、素直に気持ちを伝えた。

真剣に私の言うことを聞いていた彼女は、
「気を強く持ってね」と、
少し困ったような表情になって、言った。

あれは彼女の笑顔だったのかな。
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by wine-mura | 2011-08-31 20:22 | フランス滞在記

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